2019 Summer Journal #03

寺内元基インタビュー「海に寄り添う生き方」

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「私は研究者であり、活動家だと思っています。沿岸環境を良くしたいという思いがあるんです」。そう話す寺内元基さんが手掛ける木製サーフボードは、自身がサーフィンをする海につながる上流にある山の木でつくられている。そのきっかけは、サーフィンをするために通っていた海岸が埋め立てられてしまったことにある。反対運動も実らず、ひとつのポイントが陸地になってしまったこと。このことによって、海の背後には陸地があり、海は森と川との密接な関係の上に成り立っていることを寺内さんは強く認識することとなる。

 

東京の大学を卒業後、地元・石川のコンピューター周辺機器メーカーに就職した寺内さんは商品企画の仕事にやりがいを感じていたが、大学の建築学科で専攻していた環境に関する仕事をしたいという思いが強くなり、地球観測の衛星データを取得する仕事に転職。衛星データの受信が行われているアラスカやスウェーデンの北極圏をはじめ、世界中を飛び回る刺激的な日々だった。しかし、日本での職場であった埼玉の地球観測センターは海から遠く、なかなかサーフィンに行きづらい環境であったことや前述の海岸の埋め立てから生まれた問題意識が根底にあった寺内さんは、富山県にある国連環境計画の枠組みで海洋環境問題に取り組む環日本海環境協力センターに移り、住まいも地元へと戻ることを決めた。

人工衛星から得られる海の色のデータを蓄積し、海洋環境のモニタリング手法を開発すること。そして、膨大の情報量の衛星データをいかにシンプルに、海洋環境保全のための対策につなげられるようにするかが寺内さんの研究で扱われるテーマ。職場を移し、アイディアを得るまで6年、大学院に通い、論文にするまで4年掛かったという。そして現在も研究を続けている。

 

サーフィンは大学を卒業してから友人の誘いで始めた。それまではスキーやスノーボードといったウィンタースポーツが中心だったが、1日でサーフィンの虜となったそうだ。「テイクオフして、すーっと波の上を滑っていった感覚が忘れられなくて、それは雪山で感じるものとは明らかに違う心地良さがありました。さらにそこからサーフィンのカルチャーを学んでいくと、かっこよくて、もっともっと知りたいと思いました」という。

木製サーフボードをつくる工房では、家具も製作されている。木製サーフボードも家具の代表作である「River Table」も、その土地の材料にこだわった結果、つくる以外の選択肢が見つからなかったとのこと。研究者として宇宙からの衛星データで海を見ながら、サーファーとして日々海と触れ合う。そして木製サーフボードビルダー、家具デザイナーとして、海とつながる森を見つめる。手と頭をフルに使い、複数のアプローチで愛する海と向き合う寺内さんの姿は大きく、力強い。

 

 

寺内元基
1976年石川県生まれ。海洋研究者、木製サーフボードビルダー、家具デザイナー。(公財)環日本海環境協力センター 主任研究員/合同会社 GT Designs代表。大学卒業時に始めたサーフィンがきっかけとなり、メーカー勤務のサラリーマンから海の研究者へ転身する。海洋研究の傍ら、自然と一体となり最高の環境でサーフィンすることを追い求めた結果、その土地の上流の山の木でサーフボードを作りはじめる。大学時代に学んだ建築の知識を生かし、自宅敷地内に工房を設置し、木製サーフボードや家具製作を本格的に始め、2017年12月に合同会社GT Designsを設立。

写真: 中矢昌行
文章: メディアサーフコミュニケーションズ株式会社

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