アンドレアとローマン・ジュエルにとって、自身のナッツバターブランドFix & Foggの始まりとなったのはEva Streetにある半地下の店の窓だった。来店客はオーダーメイドサンドイッチ、好みのナッツバターをトッピングできるポリッジを愉しむことができる。
チョコレートアーモンドバターでトッピングされた甘いチョコレート&ストロベリー、ザワークラウトが載ったピーナッツバターアボカドなど、いくつかのトーストメニューを味見させてくれた。最近人気が高まったことを受けて、より大きなスペースへ移転し、新天地でもすでに客足は伸びているとアンドレアは話す。
Interview「ピーナッツバターから愛とコミュニティを」
ウェリントン中心部にあるFix & Foggの工場へ入ると、ローストされたピーナッツの濃厚な香ばしさが嗅覚を直撃する。まるで子供時代に戻って誰かにキャンディショップの奥に誘われたような感覚だ。
中で待つのはアンドレアとローマン・ジュエル、ウェリントンを拠点にナッツバターを展開するFix & Foggの創立者コンビ。とてつもなくポジティブなエネルギーと親しみやすいオーラを放っている二人の傍らでは、事務所のいたるところで規律正しく仕事にあたる従業員が、営業からマーケティング、顧客対応に当たっている。私たちはオフィスの中を案内されながら黒いベルトコンベアが次々とピーナッツバターのガラス瓶をどんどん次の製造ステップへと導くのを見ることができた。
アンドレアとローマンは2013年、第一子の出産予定日の1週間前にナッツバター事業を展開することへ一歩踏み出した。「人生を大きく転換させるイベントを目前に、人は突飛な決断を下すようです」。Smoke and Fireと名付けられたピーナッツバターを塗ったパンを頬張りながらローマンは話す。そして、地元住民達からの盛大なサポートを受けて自然とビジネスを伸ばすことができたのだと続ける。ともに弁護士としてのバックグラウンドを持ち、ものづくりに関わった経験のなかった二人が、食の生産を通して自己表現を達成する方法を見つけたのだ。
広範囲に及ぶリサーチの結果、自分たちが欲していたピーナッツを生産するアルゼンチンの家族自営のピーナッツ農家を探し出した。炒られ加工された後でも天然油分と絶妙な旨味が残るため、常温でも保存が可能なのだ。「私たちはピーナッツをミルクの入っていないコーヒーによく例えます。別の何かでごまかす必要がないのです。口にした瞬間にその甘味、酸味、塩味の具合の過不足を判断できます」とアンドレアは話す。自分たちにできるベストの商品を作りビジネスの根幹に忠実でいられるよう、常に最高品質の素材を探している二人は、心からワクワクできるプロジェクトや味に徹底的にこだわる。
二人と会話をしていると、彼らは商品のみならず顧客や地元コミュニティに対しても非常に情熱的であることが伺える。年初にはソーシャルメディアを通じてフォロワーに次の新商品に期待する味を聞いた。何千という投稿があった結果、アメリカの伝統的なお菓子「スモア」が一位に選ばれた。この味を投票した全員に限定生産の「スモア・ピーナッツバター」の瓶をプレゼントし、最後の12個はオークションに出品。売上を地元のために寄付した。
「このような形でお客様に商品を届け、それが地元コミュニティに変化をもたらすことができるのは素晴らしいことです。私たちは小規模のビジネスですが、私たちが作る小さな動きが他の同規模のビジネスにも良い影響をもたらして似たような動きが生まれたらと思っています」
Fix & Fogg は元弁護士のアンドレア&ローマン・ジュエル夫妻が2013年末に立ち上げたナッツバターブランド。以降、その味のバリエーションは増え続けニュージーランド以外にもシンガポール、オーストラリア、フィリピン、米国でも取り扱われている。過去にSupreme Coffeeとコラボレーションしたこともあり、東京の同店でも時折商品を目にすることができる。
fixandfogg.com
写真: 山田薫
文章: Nathalie Cantacuzino