海岸とサーフィンで有名な郊外エリア、ライアル・ベイにあるアトリエの前でジャック・キャンドリッシュと出会った。従来のサーフボードに含まれている毒性物質の存在に気づいてから、ジャックは自ら環境にも人間にもやさしいボードを作り始めた。
Interview 「環境にやさしい波を作り、乗る」
軽やかな小雨が降る中、ジャック・キャンドリッシュが車のクラクションを鳴らして私たちに挨拶をする。モスグリーンのTシャツにジーンズを着て、自分の店のシャッターを開けながら私たちが中に入る準備をする。
ライアル・ベイのParrotdogのすぐそばにあるOrganic DynamicはジャックがDIYで建てて自ら運営するサーフボードショップだ。英国ケント生まれのジャックは幼少期にニュージーランドに引っ越した。何度か英国に戻ったが、現在はウェリントンに拠点を落ち着かせてガールフレンドのクレアと彼女との間に生まれた赤ちゃんとともに暮らす。
サーフィンは日常から離れて自然と戯れるための、ジャックにとって常に身近な手段だった。壊れたボードを修理に出した後に背中の痛みを感じたのがきっかけで現在の仕事に至ったという。「調べてみたら、ボードの素材だったポリエステル樹脂に腎臓が反応していたことがわかりました。まさかボードの素材が体に有害な影響を及ぼすことがあるなんて。とてもショッキングな経験でした」
当時建設用具店で勤めていたジャックの頭に浮かんだのは、ユーザーにとって、そして作り手にとっても安全なサーフボードを作ること。勤め先で実験を重ね、次第にボードづくりはサーフィンと同様に、自然に身を委ねてそのエネルギーをコントロールする行為であることに気づく。この精神を自身のプロダクトに落とし込みながら、同時に環境や海洋生物にとってネガティブな影響を極力少なくする活動をすることが自分自身の理にかなっていると感じたそうだ。
ジャックはボードづくりを行うアトリエにも案内してくれた。幅広の青い機材が空間を占め、床は一面木屑に覆われている。「現在はリサイクルフォームを使用してボードを作っています。通常ゴミの埋め立て場に運ばれる素材を使うことが、私のボード作りの核になります」。
このほかに使用している素材はニュージーランド産の木材、環境にやさしい繊維や接着剤だ。ここに来るまでに莫大な時間のリサーチ、実験と失敗の道のりを重ねてきた。使える素材を確かめることは手間も時間も要する。
Organic Dynamicが目指すのは、天然素材でのみ作られ最終的に土に還ることができるボードを作ることだ。ジャックはウェリントンで育った1990年代を今も思い返すと言う。川辺や海など、ほとんど屋外で過ごしていたそうだ。現在、当時遊んだ川辺は動物の排泄物や他の環境要因によって汚染されてしまった。自分の子どもが自分と同じ経験をしながら育つことができるようなものを作りたいし、そのように生きたい。それが自分にとってのサステナビリティだと考えています」
ジャック・キャンドリッシュはOrganic Dynamic Surf Boardsの創業者、開発者。環境にやさしく無害なボードがないことに気づいたことから、2017年から自ら理想のボードを作り始めた。埋立地で廃棄されるようなリサイクル可能な素材を用いて、リーズナブルでいて高品質な、環境にやさしいボード作りを心がけている。