物を選ぶ時、一体何を考えているだろうか。形、色、値段、重量、流行り、ブランドなど、さまざまな判断基準にそって意識的に選ぶこともあれば、直感的に手を伸ばすことも案外多い気がする。ちなみに私は、気が付くとブルーかイエローの物が身の回りに溢れていて笑ってしまう。
ライフスタイルコーディネーター山藤陽子さんが営むサロンを訪ねると、そこには衣食住にまつわる選りすぐりの日用品が並んでいた。大抵の物はオンラインショップで購入できてしまう今こそ、物の選び方や好みについて考えを巡らせるにはいい機会かもしれない。
Interview 「心地よい裏切り」
見た目が好みの物に出会っても、手に取ってみたらなんだか違和感があって買うのをやめたなんて経験は、誰しも身に覚えがあるのではないだろうか。「私は、物が肌に触れた時の感覚を大切にしています。手に取った時に『気持ちいいな』と感じるかどうか」。山藤さんはYORK.という屋号の下、ブランドコンサルティングや化粧品の商品開発なども手掛けている。その全ての活動に一貫しているテーマは「気持ちいいこと」。
「気持ちのいい物で日常が満たされていたら、もうそれだけで幸せじゃないですか」と、やわらかな笑顔で語る山藤さん。身の回りをお気に入りのアイテムで満たすことはつまり、自分自身のケアにもつながる。「心がほぐれると身体もリラックスできて調子が良くなるし、人にも優しくなれるし、いいこと尽くしなんですよ」。
クローズドだけどフレンドリー、優しい強さ、軽くて丈夫。一見相反するように感じる言葉を多用されるのが印象的だったのだが、「個性が全面に出ている物よりも、内に秘められて深みがある物の方が魅力的だなと私は思うんです」という答えが返ってきた。これは彼女のアウトドアブランド好きにも通ずる所があるようで、「例えば旅行グッズって、機能性重視でデザインはシンプルな物が多いですよね。これ見よがしの表面的な主張は少ないけど、実は高機能がぎゅっと詰め込まれているというのが好きで」。YORK.の活動で大切にされている「心地よい裏切り」というキーワードにも納得がいく。
山藤さんがIcebreakerを知ったのは、普段通りに何気なく立ち寄ったアウトドアショップがきっかけだったそうで、「手に取った時の気持ち良さに惹かれて、それからずっと愛用しています。さらりとしたストレスフリーな着心地がいいですよね」。また、ニュージーランドの自然と人との関わりに丁寧に向き合い続けているIcebreakerは、そのブランドスピリットも注目を集めている要因の1つ。「羊にも生産者にもユーザーにも愛を感じます。ものづくりの背景を知れば知るほど、ブランドに対しての愛着が深まりました」。
ご自身でアロマの調香なども手掛けられる山藤さん。今回製作されたIcebreakerの為のミストは、メリノウールとニュージーランドの自然がもつ「強さと優しさ」をイメージしたボタニカルミストとなっている。「メリノのしなやかさ、ウールのふんわりとした甘さを表現できればと思いました。そしてニュージーランドからヒントをもらって、マヌカの爽やかで淡い甘みをそこにミックスしています」。また、このミストにはメリノウールを守る虫除け効果も備えていて、ウッドチップに染み込ませてクローゼットに入れておけば大切な衣服を守ってくれるという優れもの。
山藤さんは、2021年に新たなパフュームブランド『SCENT OF YORK』をローンチすることが決定している。数量限定での製作をとなるそうだが、「もし追加で製作することになっても、調香する際の部屋の環境とか、使用する精油自体にも微差がありますし、全く同じ香りに出会ることはありません。その時々の些細な違いも含めて、楽しんでいただけたら嬉しいです」。
さて、近頃では人の往来に対する制限は緩和されてきたとはいえ、「買い物に出かける以上、お客様はリスクを負って来てくれるわけで。そう考えるとより一層、ちゃんとみなさんに応えなければという想いが強くなりました」。物の選び方はもちろんなのだが、その物の魅力を人に伝える役割もとても重要だと山藤さんは語る。「人から話を聞いて、手に取ってみて、初めて魅力に気付ける物もあると思うんです。ただ私は、あなたにはこれが似合いそうだと決めつけて薦めたりはしないように心がけていて。足を運んでくださったお客様にとって、このサロンが何かの気付きの場になれたら嬉しいです」。
2020年の春を振り返ると、ご自身の生活環境に大きな変化はなかったそうだが、「家で過ごす時間が増えて、いろいろなことを見直すいいきっかけになりましたよね」と話す山藤さん。例えばサステナブルやヒュッゲなどをただの流行語として聞き流すのではなく、ようやくその本質に気付けた人もいるのではないだろうか。「いかにお金を使うかではなくて、気心知れた人と集まってゆっくりごはんを食べることの大切さとか、心を豊かにする時間を大事にできる世の中になってほしいとずっと思っていたので、それは喜ばしいことですね」と、最後に山藤さんが和かに添える。「これからはお外に出ていくことばかりではなく、家の中で心地よく過ごすことにも目を向けて、自分のご機嫌を取りながら過ごせる人が増えたらいいなと思います」。
2020 Fall – Winter – Journal 特設ページはこちらより
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山藤陽子(Yoko Yamafuji) / ライフスタイルコーディネーター・YORK.代表。「気持ちいいこと」をテーマに、ブランドコンサルティングや化粧品の商品開発など幅広く活動。2015年にオープンしたサロン・HEIGHTSには、日常にまつわる気持ちいいセレクトアイテムが並んでいる。
写真: 山田薫 文章: 藤本麻子,メディアサーフコミュニケーションズ株式会社