2021 Spring - Summer - Journal #05

浅野慧 - 信州いいやま観光局・信越自然郷アクティビティセンター

Share:

都心ではすっかり暖かい陽気が続くようになった頃、所変わって長野県飯山市では、ようやく桜の蕾がちらほらと色付き始めていた。千曲川沿いに車を走らせながら、まだ少しひんやりとした冬の気配を感じる。豊かな自然に囲まれたこの里山で出迎えてくれたのは、浅野慧さん。アウトドア体験を通じた地域振興に携わっている浅野さんに、アウトドアの魅力と、これからの観光業について尋ねた。

 

2021 Spring – Summer – Journal 特設ページはこちらより
icebreaker/journal05

Interview 「山のサイクルの中で暮らす」

 

浅野さんの職場は、信越自然郷アクティビティセンター。その名の通り、信越エリアで楽しめる四季折々のアクティビティやアウトドア情報を発信する、駅直結のインフォメーションセンターだ。「飯山駅開業と同時にオープンした場所なんです。普段僕は窓口でお客様へ体験ツアーのご案内をしたり、アウトドアグッズの販売などを行っています。」。ご自身はツアーガイドとしてフィールドに出ることは無いそうだが、話を聞けば聞くほど、それがもったいないと思えてくる。

 

「アウトドアの魅力は、やっぱりルールが無いことでしょうか。例えば市民プールで泳ぐ際には、『飛び込み禁止』『潜水禁止』などルールがいくつも決まっていますよね。でも山や川というフィールドでは遊びのルールなんて無いんです。誰からも注意されない代わりに自分の身は自分で守らなければいけないけど、その自由さこそがアウトドアの醍醐味なのかなと」。スキー、自転車、アウトドアクッキングなど、それらは全部「自然の中で遊ぶ」手段の1つだと話す浅野さん。「フィジカル的に負荷のかかる遊びだってできるし、山に行ってコーヒーを1杯飲んで帰るだけでもすごく楽しいし。そうやって自由に色んな遊び方ができるというのが、僕がアウトドアにハマった1番の理由ですね」。

 

アウトドアにまつわることなら何でもやるという言葉の通り、浅野さんの自然との関わり方は多岐に渡る。季節によって遊び方を変えながら、その時々のフィールドを目一杯満喫しているようだ。「まず冬はスキーやスノーボード。雪が溶けたら自転車やトレイルランニングを始めて、夏には上越まで遠征してSUPもしたり。日本海って夏はあまり波が立たないので、サーフィンは秋に集中的に楽しんでいます。この辺りに住んでいるアウトドア好きはみんな同じことを考えているので、海でもいつの間にか馴染みのメンバーが集まったりして」。そんなタフなライフスタイルにも関わらず、あくまで自分が好きでやっていることなので、とさらりと言えるのがまた清々しい。

ちなみに最近のマイブームは、早朝に出発して朝食前に帰ってくるモーニングランとのこと。「朝活メンバーのコミュニティもあるんですけど、学校の先生、消防士、ネイチャーガイドなど職業は様々。国内外問わず『この人、ヤバい遊び方してるぞ』っていうアウトドアのトレンド情報を見つけては仲間と共有しています」。遊び方の基本は同じでも、やはりフィールドの特徴によって少しずつ違いが出るのだという。「この辺りの土地柄を活かした遊び方をもっと探していきたいですね。信越エリアの、信越スタイルとして個性が出せたら面白そうです」。

 

そんな地元の仲間との今後の目標は、なんと長野の4大河川の制覇だと聞いて驚いた。「信濃川、天竜川、木曽川の3つは、源流から日本海までの367kmを仲間と一緒に旅したことがあるんです。1週間かけて、川下りとマウンテンバイクで」。長野には県民なら誰でも歌える「信濃の国」という県歌があり、4大河川もこの歌詞に登場するそうだ。「あと残るは犀川だけなので、槍ヶ岳からスキーで滑って、上高地をSUPで下るっていうのをいつか実現したいなとは思っています。まぁ、4日間くらいあれば足りるんじゃないかな」。

 

なおこの取材以前から、登山やスキーはもちろんトレイルランニングの大会出場などの際に、メリノウール製品を愛用しているという浅野さん。「Icebreakerは品質がすごくいいし、丁寧なものづくりをされているイメージがあります。僕は以前アウトドアメーカーに勤めていたので、職業柄、製品のタグや生地の厚さが気になってしまって。こんなに細い繊維を使っているのに織りがしっかりしていて、とても貴重な技術だと思います」。

ところで、長野県飯山市と言えば、冬は建物の2階まで雪で埋まるような国内有数の豪雪地。南北に伸びた地形のため、同じ市内でも場所によって積雪量には大きな差がある。「この辺りの特徴をよく表している、『一里一尺』って言葉があるんです。北へ一里(約4キロ)進むにつれて、積雪が一尺(約30センチ)高くなるという意味で」。そんな雪国へ、浅野さんが引っ越したのは6年前のこと。「正直、雪に関してはちょっと甘く考えてましたけど」と本人は笑っていたが、生活を見直す時間が増えた今だからこそ、季節の移ろいと共にあるその日常がとても魅力的に聞こえた。「山が暮らしのすぐそばにあるんですよね。雪が降って、ブナの原生林から水が流れてきて、その水でお米を育てたり、地下水を飲み水に使ったり。山のサイクルの中で暮らしているんだってことをすごく感じます。普段からアウトドアをやるような人じゃなくても、みんなが当たり前のように、自然の機微を感じ取りながら生活している気がしますね」。

日頃から観光業に携わる浅野さんには、ここ1年間の変化や観光に対する想いをぜひ聞いてみたいと思っていた。「観光の在り方と言うんですかね、以前はとにかくたくさんの人に訪れてもらえれば成功だったのかもしれませんが、正直今はもう、1度限りのお客さんに大勢来てほしい訳ではないと僕は思っていて。ある程度の一定人数に、春夏秋冬を通じて何度も足を運んでもらえる場所を目指したいんです」。信越の良さを分かってくれる人に来てほしい、と話す浅野さん。現にこのエリアを気に入って、第2の故郷だと呼んでくれる人もいるという。「こちらから何かを提供するばかりではなく、例えばビジターにも僕らと一緒にトレイル整備やゴミ拾いをしてもらったり、みんなでこの地域を築いていきたいんですよね。今はちょうどその狭間の時期なのかなと」。

 

また最近では、地元の方々がアクティビティセンターへ遊びに来てくれるようになったのも印象的だそうだ。「僕も今まではよく遠方まで遊びに行っていたんですけど、この1年は地元のいいところを探究する機会になったし、地域愛がより深まったというか。自分たちのこのフィールドをもっと開拓しよう!という想いが強くなりました」。スキーをやらない友達はほとんどいないと言い切れるほど、スキー文化が根付いている飯山市。これからは、アウトドアタウンとしての側面ももっと伝えていきたいという。「例えば海外だと、アウトドア好きが集まる場所と言えばここ!というイメージが確立されている街がたくさんありますよね。日本でもそういう場所ができたら面白いんじゃないかと思っていて。アクティビティセンターを通じて、信越の魅力をより深く知ってもらえるよう取り組んでいきたいと思います」。

 

2021 Spring – Summer – Journal 特設ページはこちらより
icebreaker/journal05

浅野 慧 / 信州いいやま観光局・信越自然郷アクティビティセンター担当。東京都あきる野市で幼少期を過ごし、近所での川遊びがアウトドアの原体験。学生時代にはトレイルランニングの大会に出場するなど本格的にアウトドアスポーツに打ち込んだ。卒業後はアウトドアメーカーにてプロモーションやブランド開発に携わり、2014年に信州いいやま観光局へ転職・飯山市に移住した。

写真: 山田薫 文章: 藤本麻子

LATEST ARTICLES 最新記事

「冬の色 - 双子池」 鈴木優香

2025年01月15 日(水)

Dialogue with Nature #08

「ヒツジグサと熊 - 尾瀬ヶ原・至仏山」 鈴木優香

2024年03月09 日(土)

Dialogue with Nature #07

「雪を踏む音 - 北横岳」 鈴木優香

2023年01月27 日(金)

VIEW INDEX